丸伊運輸株式会社

(2021年11月)

丸伊運輸株式会社は、首都圏を中心に大手コンビニエンスストアやスーパーなどに食品を輸送する運送事業者です。2019年4月、栃木県初の水素ステーション(以下、水素ST)事業を始めるにあたりJHyMに参画し、2020年4月、同県栃木市に「とちぎ水素ステーション」を開所しました。
今回は、同社代表取締役の伊藤公一氏にお話を伺いました。

1. 地域貢献と小型FCトラックの実証運行

弊社は以前から、国が推進している脱炭素社会の実現に関心を持っており、その要の一つである水素エネルギーの利活用に率先して取り組みたいと考えていました。よって、水素ST事業はそんな取り組みのなかの選択肢の一つではありました。
それが具体化したきっかけをお話し致しますと、運送事業者である弊社の顧客にはコンビニエンスストアを営む大手企業さんがいらっしゃるのですが、4年ほど前、その企業さん向けに栃木県内で物流センターを移設して大規模化する計画を立ち上げました。と同時に、弊社は40年近く栃木県で運送事業を続けており、このたびの物流センターの広大な用地の一部を使って何か地域に貢献できることはないかと思案していた折、水素STの話を耳にし、設置するに充分な広さを有していたことから、弊社でできることならやってみよう、という気持ちで水素ST事業への参入を決意しました。
一方、その大手企業さんは、2019年から実証用の小型FCトラックを2台導入されており、当時は首都圏を中心に実証運行をされていました。そうした状況に前述の物流センターと同じ敷地内に水素STを設置する計画が加わったことで、小型FCトラック1台を、栃木県を中心に実証運行してもらうことになりました。水素ST開所以降、実証運行は順調に進んでいます。こうした活動も、水素モビリティの新たな広がりをアピールしている点で、地域への啓発、ひいては貢献になるものと考えています。

2. 啓発・理解・需要拡大

水素ST事業への参入にあたっては、勿論、社内に慎重論はありました。そんな事業を我が社でできるのか、から、水素のビジネスはコストに見合うのか、まで、さまざまな声がありました。社外においても、周辺の住民の皆様からは安全性を問うご意見もいただきました。総じて、参入決定に関わった私を含む数人にとっては、周囲の「水素を知らない」ことから生まれるマイナスイメージが最初の大きな壁でした。
そんなマイナスイメージを払拭すべく、まず、社内では水素ST事業専門の部署を設けました。さまざまな部署から社員を集め、各分野のノウハウやツールを集積すると同時に、水素に関する啓発・教育を行いました。その結果、水素という新たな分野に「チャレンジする」という意識の変化が生まれたことは喜ばしいことでした。そして、地域の住民の皆様には説明会を繰り返し行い、丁寧にご理解を求めました。元々、地域貢献が弊社の目指すところですから、継続してご理解いただけるよう、慢心せず日々安全行動に努めています。
開所してからの状況としては、未だ栃木県では燃料電池自動車(FCV)が充分に普及していないのが残念なところです。新型コロナウィルスの感染拡大によって、地域との直接的な関わりが減り、弊社から需要拡大に向けたコミュニケーションを図ることができなかったことも要因の一つかもしれません。今後は、新型コロナウィルスの感染状況を考慮しつつ、積極的なFCV需要の創出に関わる活動を展開していきたいと考えています。

3. JHyMについて

水素ST設置の検討を深めていくにあたり、インフラ事業者さんに相談したところ、JHyMを紹介してもらいました。JHyMからは、水素STの設備業者さんを案内していただいたり、国の補助金の交付申請に向けて丁寧な指導をしていただいたり、水素STについて何も知識がなかった弊社にとっては大変助かりました。JHyMに関わることなく、弊社単独でこの事業に着手することは不可能であったと感じています。JHyMのおかげで、初期投資が軽減されましたし、運営についても継続的な経済支援があります。弊社のような中小企業にとっては手厚いサポートを施してくれる魅力的な組織です。
また、先年実施いただいた、JHyMの新規事業者を集めての研修会もとても有り難かったです。水素ST事業者同士のコミュニケーションがなかなか無いなか、研修会に参加することで多くのことを新たに知ることができました。先陣を切って水素ST事業に参入された事業者さんに対面で相談できたことも貴重な機会でした。今後も、こうしたかたちでの情報共有・意見交換の会が開かれることに期待しています。

4. 課題の克服と未来に向けて

水素ST事業を始めて約1年半が経ちますが、開所以来、水素ST単体で採算性を確保することの難しさに直面しています。高いヴィジョンも大切ですが、まずは、今後どのようにして効率を上げ、収益性を改善していくのか、それが弊社の当面の課題です。ただ、いま現在、弊社のような中小企業の独力ではどうにもならないところがあり、引き続き経済産業省さんやJHyMのお力を借りながら、また、カーボンニュートラルの機運に乗って水素と水素STに関わる市場が大きく成長することを願いつつ、自立化に向けた取り組みを推進しているところです。
最後に、前述のFCV需要の創出にも関わる、実践可能なヴィジョンとして、地域の未来を担う子供達に水素エネルギーを啓発していきたいと考えています。具体的には、FCVを使ったイベントや水素STの社会科見学など、弊社の水素STのある敷地は広いので、たくさんの子供達を集めていろんなことを企画してやってみたい。数10年先に水素エネルギーを主体的に利活用するのは間違いなくいまの子供達です。いまこそ彼らに水素が主要なエネルギーの一つになることを提示しておかねば、この先、水素の発展や高い需要は望めないのではないでしょうか。
地域貢献の志にとともに、水素エネルギー社会実現に向けての襷を繋げていきたいと考えています。

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代表取締役 伊藤公一氏 (2021年11月)