一般社団法人富山水素エネルギー促進協議会

(2019年11月)

一般社団法人富山水素エネルギー促進協議会は、富山県における水素エネルギーの利活用推進を目的として2016年2月に設立されました。地元の多くの私企業に加え、官公庁や大学も参加しており、まさに「産学官」一体となった協議会です。2019年5月にJHyMに参画し、目下北陸初となる商用水素ステーション(以下、水素ST)の建設を進めています。
今回は、同協議会の代表理事である北酸株式会社の社長 山口昌広氏と、理事のお一人である富山トヨタ自動車株式会社の社長 品川祐一郎氏に、JHyM社長 菅原英喜がお話を伺う形で座談会を実施しました(以下、敬称略)。

1. 水素と自動車

菅原:全国に水素STのネットワークを広げるべく各地を巡ると「関心はあるのだけれど、とてもハードルが高そうで1社では容易に踏み込めない」という声を多く耳にします。そうしたなかでコンソーシアム(企業の連合体)の形態でJHyMに参画された貴協議会は、今後水素STの整備に関心をお持ちの企業や団体、地域の方々に向けて大変参考になります。今日はどうぞ宜しくお願いします。
それではまず、お二人がこのたび水素ST事業に関わることに至った背景やその想いについてお聞かせください。
山口:弊社(北酸㈱)は、いまから60年ほど前に富山県高岡市で副生水素から工業用水素の製造を始めたことで水素との関わりを持ったのですが、元を辿りますと、祖父の代の大正10年創業時は山口自動車商会という輸入自動車の販売店でした。実はその時分から、品川社長のお爺様と私の祖父とは親しい間柄で、協働して富山で初めての自動車学校を開校したこともあるのです。戦後、弊社は業種を高圧ガスの製造・販売にシフトし、その後北酸㈱となったのですが、昭和40年代にはLPガス自動車の普及によりLPガススタンドを運営するなどして、自動車に必要なエネルギーとも深い関わりを持ってきました。
そうして、2014年12月にトヨタ自動車㈱さんから燃料電池自動車(FCV)のMIRAIが発売されたのを知って、これまで自動車にもエネルギーにも携わってきた私としては、「FCV普及のためにはまずは水素STの整備を」という想いに至り、協議会を立ち上げることにしました。
菅原:「水素STの整備」が協議会設立のきっかけだったのですね。
山口:はい。まさにそれが設立の第一の目的でした。
品川:弊社(富山トヨタ自動車㈱)はトヨタ車の販売会社なのですが、私は常日頃から、その環境戦略に沿って何か協力できることはないか、考えていました。その過程で、水素がいかにクリーンなエネルギーであるかを知りましたし、トヨタ自動車㈱さんの「水素社会を実現する」という理念にも共感しました。
弊社は大正6年に創業しまして(品川自動車商会)、当初は貸切自動車(現在のタクシーとバスを折衷したような運行)が本業で、その後自動車販売業に転じ、戦後トヨタ自動車㈱さんの販売会社になりました。山口社長がおっしゃられたとおり、祖父同士は親しかったのですが、山口社長と私の出会いはほんの数年前、ある会合で同席したのが初めてでした。そのとき山口社長から「いっしょに水素ST事業をやらないか」と誘われたのがきっかけで、「FCVの普及」に加え、「水素STの整備」をトヨタ自動車㈱さんとの新たなパートナーシップと位置づけ、この協議会に参加することにしたのです。
山口:いま思えば、品川社長とはお会いする前からいろんな関わりがあったことになりますね。
品川:宿命的ですよね(笑)。
菅原:お二人にはそれぞれ100年を超えるストーリーがあって、いま協議会を通じて結びついているわけですね。

2. 協議会について

菅原:それでは、貴協議会について概要や活動内容などを教えてください。
山口:北酸㈱、富山トヨタ自動車㈱、日本海ガス㈱さんの3社で発起し、現在55の企業・団体に参加いただいています。「水素STの整備」のみならず、水素エネルギーの地域への普及啓発にも力を入れており、全国の水素STや水素関連の先進地の視察、勉強会、講演会なども行なっています。
この協議会が好スタートを切れた理由に、設立時に富山県の経済界と金融業界のトップの方々が「水素」「FCV」「水素ST」に非常に強い興味を示されたことがあります。これに伴ってメディアで大きく取り上げられ、一気に盛り上がり、会員が増えました。
菅原:行政からの後押しも力強かったと伺っています。
山口:そうですね。一番力強いのは富山市です。富山市は2011年に「環境未来都市」に選ばれていますし、当協議会の設立と同じ2016年には富山市で「G7富山環境大臣会合」も開かれました。加えて、森市長さんの「環境」と「水素エネルギー」への関心は非常に高く、いろんなことに積極的に相談に乗ってくれました。こうした富山市の取り組みや協力は、我々にとってとても有り難いものでした。

3. JHyMについて

菅原:貴協議会の強固で活発な活動を教えていただきましたが、そういう取り組みのなかでJHyMはどういう点で役立っているのでしょうか。
山口:商用水素STを整備しようと考察を始めたとき、一番の課題はその経済性でした。建設費については幸いこの地域では国、富山県、富山市から建設の補助金をいただくことができるのでスムーズに試算できていたのですが、運営費については策が見つからず、長らく不安を抱えていました。そんな折、JHyMの設立を知り、具体的にお話を伺うと、JHyMに参画することで建設費に加え懸案の運営費を軽減する支援を受けられることがわかり、計画全体に見通しを立てることができるようになりました。なので、この運営費の支援は極めて大きなメリットだと思っています。支援を受けても当面は採算ベースには乗らないものの、試算が我々の許容できる範囲に収まったことで、建設の着手に踏み切ることができたのです。
品川:JHyMは官公庁や自治体としっかり連携できていて、特に補助金の手続きなどでは頼りになりました。
山口:加えて、月に一度開催される会議では情報共有や業界での共通の課題についての議論ができますし、いろんな面で有益に感じていますよ。何より全国の商用水素STの運営事業者さんが参画されている組織なので安心できますね。

4. 環境のため 地域のため

菅原:それでは最後になりますが、今後の展望についてお二人からそれぞれお聞かせください。
山口:我々の商用水素STは、言うまでもなく弊社が地元富山県で製造した水素を使用します。これはエネルギーの地産地消であり、我々は、水素ST事業を地場産業と捉えています。そういう認識のもと、何より「環境」というキーワードで盛り上がっているこの地域で、水素STをきっかけとしていろんなところでいろんな人たちが「環境」への意識を高め、水素社会の実現に向けてしっかり取り組める風土が育ってくれることを願っています。
品川:いまや「環境」の問題は、社会問題にまでなっています。そんななかで私は、地方であっても企業として何らかのソリューションを出す必要があると思ってきましたし、我々はそれを水素ST事業に求めたのです。大きなチャレンジではありますが、この事業を成功させることで「環境」「社会」「産業」全てが良い方向に向かうものと信じています。
菅原:本日は貴重なお話ありがとうございました。お二人の会社は100年にわたって、興業の時代からモータリゼーション、そしてエネルギーのイノベーションへと時代をリードされてきました。そんな歴史的な背景を持つ「リーダーズ」の高邁な理想とその実現への強い意志に感銘を受けました。
貴協議会の益々のご発展をお祈り申し上げます。


写真中央:JHyM社長 菅原英喜
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一般社団法人富山水素エネルギー促進協議会

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代表理事 山口昌広氏(左)理事 品川祐一郎氏(右)(2019年11月)