福岡酸素株式会社

(2019年12月)

福岡酸素株式会社は、九州全域及び山口県に事業を展開する産業・医療ガスメーカーです。福岡県大牟田市に水素ガスの製造工場(合弁会社)を保有しています。今年、創業100周年を迎えました。福岡県には現在10箇所の水素ステーション(以下、水素ST)がありますが、いずれも北部に所在し、近年南部への水素STの建設が期待されてきました。2019年5月、同社はこのニーズに応えるべく、JHyMに参画し、久留米市に福岡県南部初の水素ST建設を決断しました。
今回は、代表取締役社長の福田寛一氏にお話を伺いました。

1. 水素エネルギーは、チャレンジであり、チャンスでもある

 弊社は、水素に関して言えば、九州に本社を置くガス会社としては唯一のメーカーポジションですが、ガスメーカーだからといって、なかなか「水素ST事業をやってみよう」という気になれないのが本音でしょう。しかし、私は、それをやらないことには前に進まないと思ってきましたし、そういうチャレンジが大好きです。当然リスクも認識していますが、リスクを背負ってでも前に進まないと新しいことは広まっていかないものです。
 石炭と石油に依存し、そのほとんどを輸入で賄ってきたこれまでの日本のエネルギー事情において、水素は国内で生産できる数少ないエネルギーであり、今後必要不可欠なエネルギーとなっていくことでしょう。そして、そんな水素の未来を考えるとき、国内だけでなく世界的にもクローズアップされるのはやはり燃料電池自動車(FCV)です。それは自動車会社さんの20年にもわたるFCVの研究開発への熱意にも表れています。私は何事も先手を取ることを重んじてきましたので、そういう流れのなかで水素ST事業に惹かれたことは必然とも言えます。ここで言う「先手」とは無論「ビジネスチャンスとしての先手」です。水素ST事業では当面採算が合わないことは覚悟しています。けれども、3~5年後を目途に黒字ベースに乗せたいと考えています。
 水素ST事業を決断するに向けてもう一つ後押しとなったのは、やはり「福岡県南部に水素STが欲しい」という声でした。福岡県さんは水素エネルギーの普及に積極的で、具体的な要望を示してくれましたし、JHyMも然りで、久留米市が最適地の一つであることを明示してくれました。高いニーズの理由には、久留米市が
①九州を縦断するための交通の要衝であること
②高速道路のインターチェンジに近いこと
などが挙げられます。これらは「声」の根拠として非常に説得力のあるものでした。久留米市は弊社の地元ですから、「やらないわけにはいかない」という気になれたわけです。

2. 熱意を行動で示す

 参入を発表した直後、同業他社さんからいくつかお電話をいただきました。「よく踏み切りましたね」とか「本当にやれるのですか」という声もありましたが、「やります」と言い切りました。
 社内については、以前は皆、漠然とFCVの存在を知っているくらいだったのですが、去年の暮れ頃から九州の新聞等のメディアが次々とFCVを取り上げたことで、今年に入って認識が高くなっていました。「水素ST事業を始める」と発表したときも強い反発はなく、「自分たちの方向は間違っていないのだ」という反応が見て取れました。社員の心にも一抹の不安はあるものと思っています。けれど、その不安を解消していくのが我々経営陣の仕事です。
 こういう新しい事業は誰かが引っ張っていかないと絶対に成功しません。これまでもいろいろな新規事業を立ち上げ、社内で反対に遭ったこともありましたが、私自身が先頭に立って進め、すべて軌道に乗せてきました。また、苦しいことを言い出したらキリがありません。「100個できないことを口にするより、まずは1個できることをやろう」が私のスローガンで、できることをみつけ、そこに皆の力を集中していくよう努めています。
 最近では若い人たち、特に理系出身の人たちが水素に強い興味を示されます。これはガスに関わる我々のような企業にとってとても有り難いことで、水素を弊社の採用の条件の一つにすることもありますし、逆に、水素の魅力を企業が発信していかねば有能な人材が集まってこないようにも思えます。

3. JHyMについて

 JHyMのことは、昨年、福岡県さんの会議における菅原社長の講演で知りました。
 弊社の水素ST事業は、具現化に向けて本格的に活動を始めたのは昨年から今年にかけてですが、それ以前から定常的にFCVや水素STの情報は収集し、水素ST事業について考察はしていました。その考察のなかで、水素STを「建設すること」には特段厳しい困難はないものと見込んでいましたが、問題は水素STを立ち上げて「運営すること」で、この運営コストに関する困難をどう克服していくかが一番の懸念でした。
 そんな折に菅原社長の講演をお聞きして、JHyMの事業スキームが、水素ST事業者に対し、建設費だけでなく運営費も支援する堅実なものでしたので、「いまが水素STに着手するタイミングである」と確信し、JHyMに参画し、水素STの建設を決断したのです。
 参画してからは、国への補助金の申請について何かと助言いただけて助かりました。今後は、水素STの開業後のことでいろいろ相談に乗っていただけるものと期待しています。

4. チャレンジは続く

 今現在は、言うまでもなく、水素STの建設に注力しています。そして、開業して1年はその水素STの稼動を見届け、その上でもう1~2基、九州に建設したいと思っています。また、弊社には高圧ガスに関係する技術部門がありますので、今後九州で水素ST事業を始めたいという企業さんが現われたときに、建設やメンテナンスの面で貢献・支援できる体制づくりも視野に入れています。とにもかくにも「水素STを増やさないことにはFCVは普及しない」、これが私の水素のモビリティについての考え方です。
 しかしながら、FCVが全く増えないままでは水素ST事業が空回りしてしまいますから、弊社はFCVの普及についても啓発活動を行なっています。まず手始めに自社にFCVを導入しました。今年は大手電機メーカーさんが協賛する展示会にFCVを持ち込み、一般の方々にアピールし、とても良い反応を得ました。そして来年には、トヨタ自動車㈱さんと本田技研工業㈱さんの協力を得て、FCVの販売促進を目的として各自動車販売店さんに向けて説明会を開こうと計画しています。
 水素STを自立化させるためにやれることはまだまだたくさんあり、それらは3~5年で実が結ぶよう進めていかなければならないと考えています。これからもできることを見つけてひたむきにチャレンジしていきたいと思います。

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代表取締役社長 福田寛一氏(2019年12月)