南国殖産株式会社

(2020年11月)

南国殖産株式会社は、鹿児島県鹿児島市に本社を置く総合商社です。九州で石油・ガスの化石燃料・建設資材・空調機・建設機械・携帯電話の販売、太陽光・風力・バイオマスの再生エネルギー事業、鹿児島市中心市街区の再開発事業等を展開しています。同社は、2019年5月にJHyMに参画し、水素ステーション(以下、水素ST)の建設に着手。2020年4月、鹿児島市に県内初の「かごしま水素ステーション」を開所しました。それまで九州地方における水素STの整備は、福岡県を中心とした九州北部で進められてきましたが、九州南部に「かごしま水素ステーション」ができたことで、燃料電池自動車(FCV)による九州の縦断が安心してできるようになり、九州地方の水素モビリティティが格段に向上しました。
今回は、代表取締役社長の永山在紀氏にお話を伺いました。

1. エネルギーの転換期に立って

 弊社は今年で創業75周年を迎えましたが、モータリゼーション以降、主要な事業は石油エネルギーに関係する事業で、九州全体でガソリンスタンドを93店舗(直営店)運営しています。加えて、関連会社・関係会社には自動車販売会社が5社あり、トヨタ自動車㈱(以下、トヨタ)さんの車を取り扱っています。総じて、自動車は我々の企業グループのコアビジネスの一つと言えます。
 数年前、トヨタさんが、2035年頃までにガソリンまたはディーゼルエンジンのみ設定の車種はゼロにすることを発表しました。CEV*(clean energy vehicle)の生産にシフトしていくということでしょう。数年前からガソリンの販売量は減少傾向に移りました。我々は、弊社本体の石油エネルギーの事業とグループ会社の自動車販売の事業の両面から、こうした自動車の電動化の流れに関心を持たざるを得ず、そのなかでEVだけでなく、水素社会の到来に向けてFCVにも着目し、取り組むべきテーマとしました。
 日本のFCVは、まさにトヨタさんが中心となって生産しています。今後我々がそのFCVを鹿児島県で販売していくにあたり、「九州南部に水素を供給する拠点がない」では済まされませんし、他人任せにもできませんでした。福岡県などからFCVに乗って九州を縦断しようとするユーザー様への思いも同様で、鹿児島県に水素STの必要性を感じました。そして、それは、地域に密着し且つ自動車が販売できる我々のような事業者が運営すべきと考えました。我々はそういう役割を果たしたいと思い、水素ST事業にチャレンジすることにしたのです。

2. 水素STの開所前後

 「かごしま水素ステーション」は、当初、今秋(2020年秋)にオープンする計画でした。新型のトヨタMIRAIが今年の年末からの販売予定でしたし、当時は秋に鹿児島国体も開催される予定でしたので(コロナ禍により2020年10月から、2023年に延期が決定)、秋にオープンするのが絶好のタイミングと捉えていたのですが、関係機関との折衝を重ねた上で、竣工後早期にオープンすることにしました。そういう背景で4月7日にオープンしましたが、生憎なことに国の緊急事態宣言発令最中の開業となりましたので、当初は大変苦慮しました。
 しかし、そういうFCVの来店数が少ない時期に、いくつかの設備の初期トラブルを経験し対策を見い出すことができましたし、何より水素STの従業員が成長し、仕事に自信を持ってくれるようになりました。結果として、良い勉強期間になったと思います。

3. JHyMについて

 我々がFCVと水素STに着目したのは、2011年1月の民間企業13社による共同声明**がきっかけで、それ以降、FCVの動向を注視し始めました。トヨタさんにお話を伺いに行ったこともありました。ガソリンスタンドを経営している弊社としては、もちろん水素STにも興味を持ちましたが、すぐに整備にアプローチすることはなく、長い時間をかけて、大手インフラ事業者さんの全国各地の水素STを視察させてもらっていました。そして、そろそろ水素STの整備を具体的に検討してみようといくつかの関係団体に相談に伺ったのですが、どの団体からも「鹿児島県に水素STは時期尚早」との意見が出、まともに取り合ってはくれませんでした。我々のような地方の企業が独力で水素ST事業を進めるには高い壁があったのです。
 (JHyMのことは、トヨタさんのプレスリリースを通して設立当初から知っていましたが)ちょうどそんな折、インフラ事業者さんからJHyMへのアクセスを後押ししてもらい、思い切ってJHyMにコンタクトしたことで弊社の水素ST整備の検討が一気に進みました。JHyMには、「全国に水素STのネットワークを拡大する」というミッションがありましたし、インフラ事業者からの出向社員がいるので、何の躊躇もなく率直にお話することができたのです。水素ST事業の発展は、自立化も含めまだまだこれからですが、こうした黎明期に、情報共有・意見交換ができるJHyMは貴重な場であり、日本の最南端にいる我々からも提案や問題提議ができることは非常に有り難いことと感じています。

4. 自らの力で新たなフェイズへ

 弊社は、水素STの事業とFCVの販売事業が一体化している企業グループなので、次はFCVを販売することに力を入れます。言うまでもなく、FCVの来店が増えれば水素STは経済的に活性化しますので、グループ内でもFCVの販売事業に大いに期待しています。
 先日、新型MIRAIがメディアに公開されました。新型車の記事がインターネットや雑誌に次々と載ってくるのをみると、とても嬉しいですし頼もしい限りです。現行のMIRAIも良い車ですが、新型のMIRAIはさらに良い車だと感じています。すでに水素STは有るわけですから、もう鹿児島県に鶏と卵の議論はありません。より多くのお客様に気に入って頂けるものと期待しています。JHyMには、鹿児島県の水素モビリティを発展させていく上で、引き続き弊社の水素ST事業へのサポートを宜しくお願いします。

*電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、燃料電池自動車(FCV)、
 クリーンディーゼル自動車(CDV)など、従来の自動車に比べてCO2など有害ガスの排出量が
 少ない車
**『燃料電池自動車の国内市場導入と水素供給インフラ整備に関する共同声明』(2011年)
 https://global.toyota/jp/detail/1957365

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代表取締役社長 永山在紀氏(2020年11月)